変形性膝関節症のリハビリにおいて
私が学生時代に言われていたのは、
温熱療法、大腿四頭筋のセッティングといったところでしょうか。
温熱療法で筋組織の循環状態の改善を図り、
弱化している筋群を柔らかくし、
働きやすくして関節の安定化を図る。
古典的ですが、
確かにこれでよくなる方もいらっしゃいますね。
ただ、
実際にこれだけではイマイチ症状が取り切れない方が多いのも事実です。
そうじゃなかったら苦労しませんよね〜。
他によくある戦略として、
・股関節や足関節にアプローチをして膝関節への力学的負担を軽減する。
・脊柱にアプローチをして下肢全体の力学的負担を軽減する。
・大腿骨と脛骨の位置関係を修正する。
などの方法もありますね。
これらも大変有効な場合があるので
必要に応じて実施していけばいいと思います。
でも、
「なんとなくスッキリしない」
という患者さんは割と多いのではないでしょうか?
今回私が紹介したいのは
見逃されがちな骨自体へのアプローチです。
これを理学療法士に伝えると
骨なんてアプローチできるんですか?
元々硬い構造なんだから変化しないんじゃ?
とよく言われます。
でも実は骨というのはかなり変化をする構造をしています。
1,骨・骨膜の特性
そもそも骨や骨膜というのは、
筋肉や筋膜と同様に中胚葉由来の構造です。
だから柔らかいんです。
これだけだと無理やりな感じがするので、
他の例を挙げると、
動脈血流量の約4分の1が骨に流れているという
大変代謝が活発な場所でもあります。
必要に応じてカルシウムを分解して
体内に供給したりもしていますよね。
なので、
宇宙に行くと骨密度は割とすぐに低下する。
外傷後も数週間で仮骨ができる。
自律神経と骨の代謝も明らかになってきていますね。
文献:骨と神経
このように環境にすぐ適応できるように
骨・骨膜も形態・強度を変えることができるんです。
実際
私もサッカーで右足でしかボールを蹴れなかった関係で、
軸足である左踵の骨密度は右より10%も高密度でした。
(もうサッカーをしなくなって10年以上経つので今は変わっているでしょうね)
2.症状と骨・骨膜
臨床で考えてみると、
膝関節の伸展制限があるにも関わらず、
別に痛くないって人いませんか?
逆に変形は軽度なのに、
痛みを訴える人いませんか?
大切なのは変形の強弱ではなく、
①炎症が起きているか?
②中枢性感作が起きているか?
のどちらかです。
今回は②の方はおいておいて
①について話を進めていきますね。
筋筋膜性疼痛症候群(MPS)
という言葉は聞いたことがあるでしょうか?
要は血流が乏しくなると
炎症が起きて痛みがでるよってやつです。
言葉の通り、
筋肉や筋膜が固くなり血流が乏しくなって痛みがでます。
でも、
1.骨・骨膜の特性で書いたように、
骨・骨膜にも大量の血流が流れるシステムになっています。
そして環境によって変化する特性を持っています。
変形性関節症になるほど繰り返し外力に晒された場合、
筋肉・筋膜や関節、靭帯、脈管系だけでなく
骨・骨膜自体もかなりの衝撃が溜まっている状態と言えます。
勝手に言葉を作るなら、
骨・骨膜性疼痛症候群
中胚葉性疼痛症候群
とでもいいましょうか。
3.アプローチ方法
上記のような理由で
骨・骨膜に対してのアプローチを
必要としている患者さんは結構いらっしゃいます。
筋肉・筋膜などへの施術によって間接的にいい影響がありますが、
もっと直接的に施術することも可能です。
実際に膝関節症の患者さんの多くは
大腿骨・脛骨に施術をすることで
いい結果がでることがあります。
立位が全介助で、
少し動かすだけでゴリゴリなっていた膝関節が静かになり、歩行可能になった例もあります。
やり方は簡単です。
難しいことを考えず大腿骨・脛骨を触ってみてください。
問題ない骨と比較すると
・重たく
・押してくるような感じ
があります。
ポイントは難しく考えないことです。
3才児でもわかるくらいの感覚です。
硬い骨がわかったら両手で優しく包んで上げてください。
そうするとモゴモゴ〜ッと変化する感じがあると思います。
場合によっては30分程度続けることもあります。
多い場所としては大腿骨骨幹部や、膝関節の上下ですかね。
注意事項としては
プレート固定中の人に対してはやめておいてください。
固定が緩んで再骨折に繋がる可能性もあるので…。
3.まとめ
大切なポイントをまとめると
●骨・骨膜という構造も筋肉・筋膜と似たような特徴を持っていること。
●難しい事を考えず、素直に相手の身体の重たいところを探すこと。
●施術方法はゆっくり、優しく包んであげること。
ぜひ試してみてくださいね!
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