90歳女性の[頑固な]指の痺れを通しての反省

今日担当した90歳の女性。
もう何年も右手中指が痺れているとのこと。
キッカケは右コーレス骨折を受傷し、オペ後から痺れが続いている。

「痺れていない時がなくてツライ!」
「お茶碗が持ちにくい、洗って拭く時に落ちてしまう!」

などなど熱心に訴えられるので、
僕も張り切って評価スタート!

患部の手に触れてみると
痺れのある方の手は反対側と比較するとかなり冷え切っている様子。
何かが原因で血流障害を起こしていて、
そのせいで痺れが出ていそうな感じ。

さて、その原因はと評価をすると、
右膝関節と左腓骨遠位端(外果)に問題あり。
二箇所とも施術で介入すると、
まだ中指の痺れは半分くらい残っているとのこと。

もう一度評価しなおして、
上肢のエクササイズをしてもらうと、
中指の痺れは完全に消失したと。
「よしよし」と、
自主トレーニングとしてそのエクササイズをお伝えしてリハビリ終了!

さて、
「あれだけツライツライと訴えられてたからすごく喜んでもらえるかな」
と思いながら片付けをしつつ患者さんの表情をみると・・・・
なんか浮かない顔。

あれ?と思い、
症状を再度聞くと
確かに痺れはもう無いとおっしゃる。
でも、あんまり喜んでいらっしゃらない・・・。
というより、
リハビリ前と同じような訴えを再び繰り返される・・・。
もう症状はない状態になったのにも関わらず。

骨折・手術(金属の留置)・長年の経過などにより、
右手の可動性や筋力の低下はまだ残存しているので、
自主トレーニングはまだ必要な状態。
確かに「完治した」では無いと思うのですが・・・。
長年悩まされ続けた症状がよくなったので喜んでくれてもいいのに、
なぜ不満足なんでしょうか?


時間がなくて御本人に聴けなかったので、
自問自答しながらこの記事を書いています。

心理学者のポール・スロヴィックは、
「恐怖・未知・規模の3つがシステム1(感情メインの瞬発的思考)に
特に強い影響を与え、リスク認識を誤らせると結論した」
と言われています。
つまり、感情は合理性に勝るということですね。

 

今回の僕は、症状の改善には合理的なアプローチであったかもしれません。
でも、

  • 相手の求めている会話ができていたか?
  • リハビリの中で相手が不透明な部分を抱えていなかったか?
  • 相手のこれまでの経験・想いを十分に汲み取っていたか?

痺れや痛みなどの症状がなくなることは結構ですが、
それらはあくまで手段です。
手段は何かしらの目的を達成するために必要です。


症状があるから
出来ないこと・不便なこと・手間なことがあるはず。
それらが解決した状態に至るまでが目的(ゴール)です。

痺れの改善はあくまで手段でしかなく、
患者さん本人からしたら、
まだまだ「目的」に到達した感じがしなかった
だから十分に満足して頂けなかったのかな?と思います。

症状だけ取ることを優先して介入してしまった
自分の態度を反省させられた出来事だったなぁと。

相手の望んでいるゴールを共有し、
達成してこそアプローチにも意味があります。

明日からまた気持ちを新たに臨床を楽しめそうです!

 

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