難治性の痛みへの対応まとめ

厄介な疼痛は
アロディニアとかCRPSがよく言われます。
投薬効果も乏しく、
メンタルの問題だと判断される患者さんは多いです。
今回は私の経験をまとめてみます。
アプローチに困っている方の参考になれば幸いです。

医師の診断では異常所見がないのに、
投薬が効かず、
強い疼痛を訴えられる患者さんを
担当したことはありませんか?

交通事故などの外傷後の痛み
脳血管疾患発症後の痛み
等がキッカケの方が多いでしょうか。

明らかな異常所見がないため、
メンタルの問題だと片付けられて、
問題のある患者だとレッテルを貼られて、
病院をたらい回しにされている患者さんを何人も見てきました。

「この患者さんはメンタル面がおかしいと思います。
先生担当代わってもらえます?」

と他のセラピストから言われたこともあります。(確かにそういう事例もあるので一概には言えませんが💦)

でも関わってみると、
ちゃんと異常所見はあるし、
本人も治療へのモチベーションが高い方がほとんどです。

今回は難治性の疼痛について理論と経験をまとめてみました。

1.難治性疼痛の背景とアプローチ

痛みがあるということは、
その背景の要素は大きく分けると下記2つです。
①炎症の問題
②脳機能が低下している

1-1.炎症の問題

炎症には急性炎症と慢性炎症があります。

急性炎症について
炎症所見というと以下が有名ですね。
・セルススの4徴候
(発赤・腫脹・発熱・疼痛)
・ガレノスの5徴候
(セルススの4徴候+機能障害)

とても辛い状態ですが、
安静にしていれば普通は2〜3週間で落ち着きます。

ぎっくり腰は
24〜48時間以内が疼痛のピークと言われたりしてますね。

セラピストとしては
・患部を強く刺激はせず、循環を良くする
・明らかに動き方に問題がある場合は指導する
・痛みの経過をしっかりと相手に伝える
という対応が最優先になるかと思います。

慢性炎症について
こちらは急性炎症のような
明らかな徴候がない場合があり、
「なんで症状が続くの?」
という場合もあります。

慢性炎症は自覚症状はなく、
数週間から数年続くとも言われています。
WHOの定義では下記の様になっています。

低レベルの炎症反応が年余に渡って継続・遷延化し、線維化し、臓器の機能不全(生活習慣病や癌)に至る。 このような疾患を総称して「非感染性疾患 non-communicable disease:NCD」と定義し、医学・保健衛生上の新たな重要課題と位置づけている。 自己免疫疾患や癌・メタボ・神経変性疾患など慢性疾患に共通する病態として慢性炎症が注目されている。

要は
CRPの値が低値であっても
実は炎症が起きているということですね。
医師からは「異常ないけど」となる所以です。

慢性炎症の要因として
・呼吸の影響
・脂肪組織の影響
・糖尿病の影響
・加齢に伴う影響
・栄養の影響
・炎症の転移
・ストレス・ゲートウェイ反射
など様々な要因が挙げられています。

慢性化した難治性疼痛は
時間が経過してもなかなか治らない
って意味なので、
急性炎症だったものが、
慢性炎症に移行したケースもあるかと思われます。

なので、
疼痛のある部位以外にも
なにか問題がないか?
を診る視点が求められますね。


例えば、
何十年も前のオペなどの既往歴も
とても重要な情報になります。

術創部が何年立っても、
赤いままで慢性炎症状態の人もいますし、
白く瘢痕化していても、
そこが原因で炎症を助長する原因になっていることがとても多いです。

1-2.脳機能低下

ストレス・ゲートウェイ反射では、
脳内の局所に炎症を起こすと言われています。

実際に、
慢性症状のある方の脳機能をテストすると、高確率でエラーが検出できます。

巧緻性が低下していたり(小脳機能)
僧帽筋が緊張していたり(脳神経機能)
めまいがあったり(前庭・小脳・脳神経機能)などなど。

筋骨格系だけの検査だと
異常所見を見落としてしまうことがあります。


運動器疾患であっても、
病的反射や神経学的所見は大切なんですね。

セラピストとしては、
これらの脳機能の異常所見も
一つの目安になります。

しばしば頭蓋仙骨療法が不定愁訴に対して有効であるも
脳の炎症対策として機能している
という意味もあるのではないでしょうか。

1-3.まとめ

要は、
ひっそりと続く身体構造や脳の炎症が
難治性疼痛の背景にあるということですね。

チェックすべき点としては
・全身の身体構造の軽さがあるかどうか?
・運動習慣はあるか?
・食事習慣に問題はないか?
・口腔は清潔か?
・脳機能に問題はないか?
・呼吸機能に問題はないか?
などがオススメです。


専門的なアプローチ(質)も大切ですが、
適度な運動(量)も大切です。
運動には下記の効果があると言われていますので、
下手なアプローチよりよっぽど効果的です。
・抗炎症サイトカインを産生
・肥満の抑制
・血流の改善
・骨への刺激
・酸素供給の増加
・代謝の改善
・ストレスの解消

どうしても勉強すると専門的な事をしたくなりますが、
質と量のバランスを大切にしたいですね。

2.難治性疼痛ケース

これまでの経験をいくつかシェアします。

2-1.交通事故後のケース

交通事故により頭頸部を中心とした不定期の痛み。
最初に通った整形外科では
「保険金目的だろう」
「メンタル面が問題だ」
と決めつけられても我慢して
辛い思いをしながら通院していたが、
勇気を出して他の病院に受診。
私が関わる事になりました。

評価してみると
痛みを訴えられる部位以外にも
ストレス反応を見つけました。

その部分に触れていると、
過去の怪我のエピソードが出るわ出るわ。

積もり積もった心身のダメージで、
身体の回復機能が働かない状態になっていたんでしょう。

問題部位へのアプローチ(頭部と左足首)を続けること1ヶ月ちょいで症状は消失!

現病歴だけではなく、
過去の既往歴や、
現状抱えている想いなども含めて
決めつけなく相手と関わることが大切ですね。

2-2.脳出血後の痛みのケース

脳出血後右片麻痺を呈した方。

麻痺側四肢は触れるだけで
のけぞるような反応を呈して
痛みを訴えられる状態。

でも、
歩行時は痛みはないと。

ということは、
物理的な刺激が痛みの原因ではない。
急性炎症が身体に起きている訳ではない。
ということは分かります。


脳神経テストをすると
Ⅲ・Ⅳ・Ⅵ・Ⅶ・Ⅷ・Ⅺ神経
のエラーを認めました。
めまいやふらつきも認めたので、
脳の広範な部位が上手く機能していない様子。

脳機能低下により、
なんでもない刺激が
痛みに変換されている状況かもしれません。

能力としては持っているのに、
歯車が上手く噛み合わず、
能力を発揮できない体験はしたことありませんか?
イップスも同じようなものですね。

プローチは、
・頭部と非麻痺側上下肢への施術
・動き方の指導
・腹式呼吸
を行いました。

痛みがある麻痺側は触れられない。
なので非麻痺側に対して
施術リラクセーションの獲得と、
リラックスしながら動く方法を指導しました。

呼吸方法については
胸式呼吸優位であり、
代償で呼吸補助筋群も過緊張状態でした。


なのでIAP呼吸を採用。
「スタンフォード式疲れない体」
という本にも載ってましたね。

ドローイングのように、
横隔膜を収縮させて固定するというよりは、
伸ばしながら安定性を得るというコンセプト。

子供は皆できているけど、
成長とともに失われる呼吸方法とも言われていますね。

この方も
呼吸機能はかなり低下していたので、
呼吸法を通して脳神経と、
自律神経が整うのを
期待してやってもらいました。

2〜3ヶ月程度で痛みは改善。
今は痛みは全くありませんが、
心身のストレスがかかると、
定期的に脳神経のエラーが強く出るので、
脳機能が完全に安定したとは言えないです。


現時点の私の力量では、
定期的なフォローが必要だと考えています。

2-3.腰椎椎間板ヘルニアの痛みのケース

腰椎椎間板ヘルニアで入院中の男性。
L4-5の圧迫があるという診断でしたが、
痛みの部位は全身・・・・

全身のどこかをかる~く触るだけで
痛み全身に出てしまう状況。


物理的に痛みになるような刺激でもないのに、
デルマトーム・マイオトーム・スクレロトームとは違ったパターンで痛みが出現。

ということは、
身体構造よりも、
脳の方が不安定になっている様子。

全身探した結果、
唯一鼻は触れても大丈夫な箇所でした。

鼻は硬膜とのつながりの強い場所でもあるので、
そこから施術を加えると、
腰を始め、全身の痛みは改善していきました。

このときは
あまり知識も技術もなかったので、
ひたすら苦痛が出ないポイントを探していたら偶然良くなってくれたケースでした。

2-4.無力だったケース

これまで良い結果が出た事例を挙げてきましたが、
良い結果を出せなかった患者さんもいます(T_T)

・触ろうとするだけで痛みを訴える失語症片麻痺の患者さん
・転倒で頸部をぶつけてから全身の痛いを訴える患者さん
・出産後の腰痛を訴える患者さん

病名やキッカケは同じようなケースでも
全く介入結果はことなるのが臨床です。

もし再び担当させてもらうことができるならば、なにかできることがある自分でありたいと思ってます。


3.まとめ

アプローチに困る疼痛についての理論と事例について書いてきました。

急性炎症の場合は
速やかに、なるべく穏やかに
キツイ時期が終了することのお手伝い。

慢性炎症の場合は、
現場(運動器)以外の
脳の機能低下も起きている可能性がある。
脳機能の確認や、
呼吸状態の確認、
全身の緊張状態を確認する。

急性炎症から
慢性炎症へ移行してしまわないように、
局所と全体両方の可能性を考えてアプローチしていくことが大切だと思います。

なかなか良くならない症状の患者さんを
担当されているセラピストのお役に立てたならばなによりです。
ご覧頂きありがとうございました!

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ABOUTこの記事をかいた人

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医者にできない治療をするを目標に理学療法士を目指す。 2005年に資格取得以降、給料の大半を勉強に注ぎ込み続ける。 学びの中で、知識・技術よりも大切な思考に気づく。 その内容を臨床で結果を出せず悩むセラピストに向けて情報発信中。