重度片麻痺患者の階段昇降を改善した症例

高齢・片麻痺症状・廃用・認知面低下などのネガティブな条件が揃っている方に
セラピストとしてできることはなんでしょうか?

以前はその場だけの効果しかだせず限界を感じていましたが、
最近介入を変えることで光が見えてきました。
その考え方をシェアします。

主に介護保険施設などで働いているセラピストにとっては同じ悩みを持っている方も多いと思います。そんな方の参考になれば幸いです。

片麻痺の高齢者の方

玄関前に階段が10段以上。
この階段の昇降が出来るかどうかが
自宅生活が維持できるか、
施設に行くのかが決まる大切なポイントです。
自宅生活を続けていくことを希望されているのでなんとかしたい方です。

年齢は90代。
発症から5年以上経過。
麻痺側はブルンストロームステージでⅡ・Ⅱ・Ⅱ。
MMTは非麻痺側・体幹2~3レベル。       
感覚は表在・深部ともに軽度鈍麻。
HDS-Rは14点。

介助があればなんとか階段昇降はできていたが、
最近は厳しくなってきており、
体幹伸展が保てず、非麻痺側の足も昇段ができない事が増えている。

座位姿勢でも前傾姿勢となりやすく、
運動を促すとその場ではやってはくださるが、
易疲労性があり続かない、
また能動的に動かれることは殆ど無い。

高齢で麻痺があり、
廃用・認知機能低下が進んでいるこの状況で、
僕ら理学療法士が出来ることはなんでしょうか?

以前のアプローチ

昔であれば、
関節・筋肉・筋膜などの柔軟性改善を図り、
運動負荷にて筋活動賦活と感覚入力し動作の定着を図る。
ような内容のアプローチとしてきました。

でも、
麻痺やサルコペニア・フレイルの状態では筋肉組織の強化は時間が必要。
感覚入力と言っても、こちらの意図したものを受け取ってもらうのは難しい。

回復期病棟などで量的に担保できる状況ならば別なのですが、
その後の慢性期・維持期でリハビリの時間が短い環境では、
限界を感じるのが正直なところでした。

最近のアプローチ

最近やっている私のアプローチは原因を潰すことです。

つまり、
「筋活動が抑制されている原因を潰す」
です。

この原因が分かるとサルコペニア・フレイルの状態でも、
よりよいリハビリ効果が得られるんじゃ無いかと思ってました。


この方の特に体幹伸展ができない原因を探ると、
両側の脳幹に機能低下がありました。

脳幹の機能といえば、
脳幹網様体による筋緊張や運動の調節、
覚醒状態の維持などを左右する大切な部分です。

この機能を改善するために、
左大腿部からリリースを加えてセッション終了。
評価から治療終了まで時間は10分も無いくらいです。


その後は体幹伸展がスムーズに可能となり、
ご自宅でも夜間のトイレの介助が楽だったとご家族より教えてもらえました。
1週間後の姿勢もよく、
階段昇降もスムーズでしたので、
昔やっていのアプローチよりも効果があったんじゃないかと考えてます。


以前は
脳幹網様体を刺激するために、
麻痺側への荷重を促す形で片脚立位訓練なんかをやって一時的には良くなった経験がありましたが、これほどの効果は得られてませんでした。

あとは脳幹部の機能を維持するための寝てても出来る運動をご家族に伝えて、
経過を見ている状況です。

まとめ

廃用が生じるのは筋肉だけではなく、脳にも起きます。

私も数年ぶりにサッカーをした時に、
違和感が凄まじく頭と身体がついていかない感覚に戸惑った経験があります。


運動学的な視点も大切ですが
脳や神経学的な視点もとても面白いと感じる今日この頃です。

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