圧迫骨折後より背臥位が取れない症例

痛みの改善には
身体構造への評価は不可欠だと思います。

しかし、その評価結果=原因なのでしょうか?
起きている現象(評価結果)と症状(疼痛など)が必ずしもイコールとは限りません。

人間の奥深さ・複雑さはとても把握しきれるものではないと感じます。
最近経験した腰部痛の症例を通してそんな経験をシェアできればと思いこの記事を書いております。

圧迫骨折後より背臥位が取れない症例

圧迫骨折後より常に腰痛があり、
特に夜間は側臥位でしか横になれず、なかなか熟睡できないと言う男性。

圧迫骨折部受傷から1年以上が経過していても症状は変わらず。
その間色々な病院、接骨院や整体院に行っても、全然変わらず途方に暮れていたとの事。

圧迫骨折以外にも基礎疾患をお持ちだったので他にも症状があるのですが、
1番のニーズは背臥位で寝れる様になる事だったので、まずはそこにフォーカスして介入しました。

疼痛部位

評価の際にも背臥位をとることは疼痛のため困難。
部位はハッキリとせず腰背部全体。
叩打痛はなし。

<考察>
叩打痛はなく、
疼痛はずっと同じという事なので現在新鮮な骨折があるとは考えづらい。
所謂慢性痛の状況かと。

脊柱

全体的に可動性は低下しているが、
特に胸椎は後弯が増強して固定が著明で、腰椎は相対的に伸展位。

頸椎は右側屈・回旋制限が著明。
腰椎は左側屈方向に不安定性+。

<考察>
頸椎周囲の問題は硬膜や、頭部や腹部の循環低下、
関連する腰椎の問題などを引き起こす可能性があるのでとても重要な問題です。

筋緊張

腰背部は全体的に過緊張であり、
四肢は下肢は左、上肢は右に交差する感じで過緊張。
特殊感覚を入れると即座に緊張の緩和あり。

<考察>
特殊感覚入力にてかなりの変化が得られるので、
筋肉組織自体の問題より脳幹部の問題の方が大きいと予想。

歩行

前傾姿勢でワイドベース。
時間経過とともにわずかに左回旋・屈曲方向に崩れていく。

<考察>
腰椎は左椎間関節に不安定性があるので、
前頭位・胸椎屈曲で前方への推進力をカバーしている。
でも筋肉のコンディションは脳幹からの支配も不安定であり、
過緊張なので血流も不十分で出力も低く、耐久性も乏しい為姿勢が崩れてしまう状況。

定型的な形で踏ん張る癖があり、
背臥位では圧の分散ができない状況と考えました。

身体構造がこのようになっている原因は?

「身体構造がこのような状況になったのは圧迫骨折だから」
であれば1年以上の時間経過や様々な治療院である程度改善しているはずです。
にも関わらず症状が変わらないのは他に原因があるからだと考えて評価を進めていきました。

その結果、一番の原因はメンタル面の問題でした。

アプローチ

メンタルの問題に対して頭蓋よりリリースすると、
その場で背臥位が痛みなく取れる様になりました。

一ヶ月以上経過しても
特に支障なく背臥位で寝れているとの事。

まとめ

夜に熟睡出来ない状態というのは、
治る土台としてはグラグラなものになってしまいます。

「睡眠は1番の薬」
「睡眠こそが生物のデフォルト」

などと言う言葉がある様に
しっかりと寝れる環境を整えることが出来たのは今後にとっても有意義に作用するかなと思ってます。
(実際経過としては回を重ねるごとに回復されています)

病院で、レントゲンやMRIなどで衝撃的な画像を見せられ、
さらに医師からショックな内容を説明されて、
無意識な部分でダメージ(この方の場合思い込み)を受けている方はとても多いです。

構造の問題がある場合は医師の領域ですが、
それ以外の部分は我々セラピストの領域です。

理学的所見で問題点が発見できても、
それを引き起こすさらに深い問題点は1人1人違います。

以前の私は深い問題があるなとは思えても、
対処する術がとても限られてました。

まだまだ課題はありますが、
やっと、少しずつ理想のセラピストに前進できているのを感じてます。


理学的所見はとても大切で、その重要を否定するつもりは全くありませんが、
その評価結果=原因なのか?
と結果(症状の変化)から逃げずに考え続けることがとても大切かと感じます。

ご覧頂きありがとうございました!

2 件のコメント

  • お疲れさまです
    いつも興味深いレポートをありがとうございます

    長期間患っている方は、主訴が曖昧になり、どのようにすると痛みが出るかも理解できていない状態になっていることも多々あると思います

    合わせて何を改善できれば良いかの目的(欲求)も定まっておらず、ただ「医者でこう言われた」の言葉が張り付いているような方もいます。そういう点に於いて、

    構造の問題がある場合は医師の領域ですが、
    それ以外の部分は我々セラピストの領域です。

    これはまさに的確なご提案だなあと思いました。

    これからもよろしくお願いいたします。

    • いつもコメントありがとうございます!

      理論などの「正論」を振りかざすのではなく、その人その人に合った前に進める方法を提供する事がとても大切だと思います。

      その合わせ方を探求してます。
      今後ともよろしくお願い申し上げます!

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