具体と抽象

セラピストに一番大切な力といっても過言ではない【考える力】について書いてみます。

この記事は、
・学んでいるのになぜか結果が出せないと感じている人
・自分の能力が低いと自己嫌悪になっている人
・臨床でどう考えたらいいのか分からない人
の参考になれば幸いです。

具体と抽象

今回は「具体と抽象」という言葉です。

聞き慣れない言葉かもしれません。
少なくとも私は学生時代は全く知らなかった概念です。

大腿四頭筋を例に具体化すると
 大腿四頭筋
  ↓
 内側広筋
  ↓
 内側広筋斜頭

要は
具体化するほど特定のものになっていくのが具体化です。
ズームインして視点を絞る作業ですね。

逆に抽象化すると、
 大腿四頭筋
  ↓
 大腿筋群
  ↓
 下肢筋群
  ↓
 筋肉
  ↓
 運動の力源

要は
特徴・共通点をまとめるのが抽象化で、
ズームアウトして視点を広げる作業です。


施術で例えを出すならば、
徒手療法には様々な流派、やり方がありますよね。

具体的には、
押したり、引いたり、捻ったり、振動を加えたり、振戦を加えたりなど。
●回とか、●秒とか、●グラムの力でなど
いわゆるノウハウというやつです。

それらを私なりに一言で抽象化すると
「体性感覚を利用した刺激」
とすることができます。

いかがでしょう。
なんとなく具体と抽象のイメージが伝わりましたか?

具体と抽象のメリット・デメリット

メリット

具体はわかりやすいので、
セミナーでも●●テクニックとして大変重宝されます。
実際そのようなセミナーや動画を出しているところは非常に多いです。

一方、
抽象は雑多なものを一言で整理する事ができるので、
一見シンプルでわかりやすいものになります。

デメリット

具体は
矛盾や逆説から避けられないというデメリットがあります。
徒手療法の業界だと特に
「うちが一番!あっちの流派は●●がわかってない!」
などは尽きない話ですよね。

PTの臨床であれば、
運動連鎖から力学的ストレスを考えようとしても、
上から考えた時と、下から考えた時に矛盾して混乱するとか。

一方抽象は理想論で終わりやすいというデメリットがあります。
解釈の幅が大きい為に、いざ臨床でどうしたらいいのか迷子になりがちです。
「体性感覚を利用した刺激をすればいいんですよ」って言われても困りますよね?
「理論・理屈は分かるんだけど…」という感じになります。
理想論だけ振りかざし、相手を煙に巻いている人もいますよね。

具体と抽象を行き来する

【具体と抽象】
どちらの思考も必要不可欠ですが、
問題なのは学生時代に具体化を優先される傾向が強いという点です。

私の養成校時代を思いだすと、
【健康問題を引き起こしているのは力学的ストレス】
という抽象を元に、
解剖・運動・生理学という具体を掘り下げる教育を受けてきました。


解剖学・運動学・生理学は言うまでもなくとても大切な学問ですが、
臨床で説明しようとするとどうしても矛盾が出てくるケースがあります。
具体ですから矛盾する事象は当然のごとく沢山出てきてしまうのが必要なのです。
そうなった時にどのように考えるのか?
つまり抽象化する力を養成されることがほとんどないんですね。

今の私なら
具体的に
「●●関節が、いや▲▲筋肉の方が問題?」と考えるのではなく、
抽象的に
「そもそも力学的ストレスが問題と考えるのが妥当なのか?」
「そもそも健康な状態とはなんなのか?」
「その人が必要としている刺激は体性感覚以外にもあるかも」
などと考えるとこれまでとは違う評価・治療も思い浮かんできます。

抽象という理想論は
どのように具体(ノウハウ)を使うべきか?
を決定付けてくれる役割があります。

実際の臨床では病名が同じでも、
痛みの強さ、タイミング、感じ方も違うし、
施術や指導に対する反応も違う。
とてもいくつかのノウハウで全て解決するような分野ではありません。

学んだものを一旦抽象化し、応用が効くようにする必要があります。
1を聞いて10を知るというヤツですね。

ただただ具体(ノウハウ)を学び実践するだけなのは、
1を聞いて1を知る
の状態を続けているだけで非常に効率が悪いです。
セミナー受講しても結果を出せないという自己嫌悪状態まっしぐらです。

あなたが学んだ内容は
よっぽど詐欺師みたいな人に教えてもらわない限りは、
ある程度は必ず効果があるものばかりです。
一方必ず限界があります。
万能な方法ならみんなやってますよ。

学んだものを自分の「力」にするためには、
一度そこ講師の言っている内容の特徴を自分なりに整理することが必要です。
そうすると応用が効く様になってきます。

学んだものをそのままやるという
学校教育の名残が残っているいわゆる真面目な人ほど臨床で苦労すると思います。

実際私も苦労してきました。
そのような無駄な時間を省くために、
【具体と抽象を行き来する】ということを
意識してみてはいかがでしょうか?
日常の噛み合わない会話においてもとても有効なものです。

如何でしたでしょうか?
抽象的過ぎたかもしれません(苦笑)

今後もこのような【考える力】を身につける為の記事を書いていきますので
質問など頂けると嬉しいです。

それではご覧頂きありがとうございました。

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臨床で苦しむセラピストに向けて、 壁を乗り越える為の5つの力を磨き、 【理論】を【現実の力】にするお手伝いをしています。