Why→What→Howで変わる説明技術
患者さんの「?」な表情、見覚えありませんか?
「今日は膝の可動域訓練を行います。膝を曲げて、そこで30秒間保持してください。これを3回繰り返しましょう」
こんな説明をした後、患者さんが困ったような表情を浮かべている光景。
理学療法士なら一度は経験があるのではないでしょうか。
私も20年の臨床経験の中で、何度も患者さんのそんな表情を見てきました。そして気づいたのです。患者さんが本当に求めているのは、「なぜ」という理由だということに
患者さんの中の心の中を想像する
私たちは専門知識・技術を持っているからこそ、つい「何をするか(What)」や「どうやるか(How)」から説明を始めてしまいがちです。
でも、患者さんの心の中では「なぜそれをするのか(Why)」という疑問が渦巻いているかもしれません。
• 「なぜこの運動が必要なの?」
• 「なぜ今、これをしなければならないの?」
• 「なぜ私の症状にこの方法が効果的なの?」
ところが、私たちは訓練内容(What)や方法(How)の説明に時間を費やし、肝心の「なぜ(Why)」を後回しにしてしまいがちです。
例えば、膝の術後患者さんに対して:
❌「膝の屈曲練習をします。ゆっくりと曲げて伸ばしてください」
⭕「手術で固くなった関節は痛みを出したり、筋肉の働きを邪魔するという問題を起こします。ですので今から関節を動かす練習をしましょう。まずはゆっくりと動かしていきましょう。」
後者の方が、患者さんの「なるほど」という納得感が全く違うはずです。
歩行訓練での説明
よくやってしまいがちな説明(What→How)
「今日は歩行訓練を行います。手すりを持って、右足から一歩ずつゆっくり歩いてください」
Why思考の説明(Why→What→How)
「退院後、安全に家の中を歩けるようになるために(Why)、今日は手すりを使った歩行訓練を行います(What)。まずは右足から一歩ずつ、ゆっくりと歩いてみましょう(How)」
どちらの説明を受けた方が、患者さんは前向きに取り組めるでしょうか?
Why思考がもたらす4つの効果
1. 目的意識の共有:患者さんと理学療法士が同じゴールを向く
2. 主体性の向上:「やらされている」から「やりたい」への変化
3. 信頼関係の構築:「この先生は私のことを考えてくれている」という安心感
4. 継続性の向上:理由がわかるから続けられる
段階的な説明の流れ
患者さんが「なるほど、それなら頑張ってみます」という気持ちになってから具体的な方法論(How)を説明することで、理解度も実行ども格段に向上します。
段階的な説明の流れ
1. Why:なぜ必要か
「○○さんの症状を改善するために」
「退院後の生活で困らないために」
2. What:何をするか
「△△という訓練を行います」
「□□の練習をします」
3. How:どうやるか
「具体的な方法は…」
「注意点は…」
明日からできる実践のポイント
1. 説明前に「なぜ?」を自問する
訓練内容を決めたら、「なぜこの患者さんにこの訓練が必要なのか?」を自分自身に問いかけてみてください。
2. 患者さんの立場で考える
「もし自分が患者だったら、何を一番知りたいだろう?」という視点を持つことが大切です。
3. 専門用語を日常言葉に変換する
「可動域訓練」→「関節を動かす練習」
「筋力強化」→「筋肉を鍛える訓練」
4. 具体的な生活場面と結びつける
「階段を安全に上り下りできるように」
「お孫さんと一緒に散歩できるように」
経験豊富やセラピストほど要注意!
特に中堅どころや職人気質のセラピストは、知識・技術に自信・確信があるからこそ、この「なぜ」の説明がおろそかになりやすいです。
私自身の反省を込めて書いていますが、経験を積む程、患者さんの視点を忘れがちになってしまうのです。
まとめ:説明順序を変えるだけで患者さんの反応が変わる
患者さんの「?」な表情を「なるほど!」に変える鍵は、説明の順序にあります。Why→What→Howの順序で説明することで、患者さんは:
• 現在の状態を理解し、
・治療の目的を理解し
• 自分事として捉え
• 前向きに取り組める
ようになります。
明日の臨床から、ぜひ「なぜ」から始める説明を試してみてください。患者さんの表情の変化に、きっと驚かれるはずです。
患者さんとのコミュニケーションで困ったことがあれば、ぜひコメントでシェアしてください。一緒に解決策を考えましょう。
コメントを残す